ハゲタカファンドとは何なのか?
2019年07月30日ヘッジファンドについて調べていると、たびたび目にする『ハゲタカ』という言葉。映画やドラマになることもあり、ぼんやりと聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
しかし、その実態をはっきりと把握している人はあまり多くありません。
少し勉強した人の中でも『ハゲタカファンド』と『バイアウトファンド』をごちゃ混ぜにして覚えている人もいます。
ハゲタカファンドとは
皆さんは、鳥のハゲタカはご存じでしょうか?
ハゲタカは画像のような見た目をした鳥で、主に死体に群がって腐敗した肉を食べることから、私利私欲のために弱者を食い物にする悪者のたとえにも使われます。
この鳥の性質と同じようなことをするファンドを『ハゲタカファンド』と言います。
もう少しわかりやすく説明するために、具体的な例を用いて解説していきます。
ハゲタカファンドとは、借金苦などで首が回らなくなっている企業(債務者)からいかに資金を回収するかで利益を出しているファンドです。
そのやり方からも世間からはあまりいい目で見られることはありません。
例えばある会社が銀行などから100億円のかりいれをしていたとします。銀行は
困っている債務者(T社)から、いかに資金を回収するかという投資行動だからだ。銀行はT社からの借入の回収が不可能と判断し、T社に対する債権をいくらでもいいので他の会社に引き取ってもらえないかと探し始めます。
ここで登場するのが『ハゲタカファンド』です。
ハゲタカファンドは銀行からT社を元値の10分の1程度で買いたたき、T社からはあらゆる手段(訴訟や担保権の実行)を講じて債権の回収を行います。仮に50億円回収することができたら40億円の利益になるということです。
先ほども言いましたが、このように死体蹴りにも似た行為をして利益をあげていることから世の中からはあまりいい印象を受けることはありません。しかし、実際は借りたお金を返すことができなくなったほうにも原因がないわけではないので、主観的な物事の良しあしで『ハゲタカファンド』について語ることは難しいといえます。
バイアウトファンドとは
バイアウトファンドは、ハゲタカファンドとは違って一般的なファンドのイメージに近いです。複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金で、事業会社、未公開会社あるいは業績不振の上場企業などに投資し、企業価値を高めたうえで、転売や株式を売却することで資金を回収し、投資家に利益配分することを目的としたファンドのこと。
プライベート・エクイティ・ファンド、MBO(マネジメント・バイアウト)ファンドや企業再生ファンドなどがこれに該当する。
簡単な覚え方としては『ハゲタカファンド』は債券投資家。『バイアウトファンド』は株式投資家と覚えておくといいでしょう。
企業再生ファンドとは
ハゲタカファンドが債権の回収だけを目的として利益を上げるファンドなのに対して、『企業再生ファンド』と言って、会社の債権を安く買い取り、その後の回復や成長により利益を上げるタイプのファンドも存在します。
民間の企業再生ファンドのみならず、国が運営する「地域経済活性化支援機構」も企業再生ファンドの一種です。
経営不振の企業に投資するためリスクが高く、業務を遂行する為には専門知識や判断力が必要となります。
企業再生ファンドの投資対象は、新規事業の失敗や債務超過に陥っており企業経営が厳しく、「本業の収益力が高い」もしくは「優れた技術やノウハウを持っている」会社となります。
株式を購入した後は、不採算事業の売却や専門家の派遣・コスト削減を通じて企業価値の増大を図ります。
事業再生に際しては、事業の方向転換による再生を目指す(ターンアラウンド)場合と、リストラやダウンサイジングにより再生を目指す(ワークアウト)場合があります。
どちらの方法を用いるかは、ケースごとに判断します。
事業再生の達成により十分に企業価値が上昇した時点で、企業再生ファンドは株式公開やM&Aにより、エグジットを実施します。
企業価値の向上に伴い株価も当初よりも上昇している為、M&Aや株式公開により多額の売却益を獲得できます。
獲得した株式の売却益の中から、投資家に利益を還元します。
国にも容赦しない
ハゲタカファンドが活躍するのは何も企業だけに限った話ではない。
2001年にアルゼンチンが債務履行を決めた際にハゲタカファンドの出番となりました。
ハゲタカファンドは国相手でも容赦などしない。アルゼンチンのケースではアメリカにあったアルゼンチン中央銀行の預金や、大統領専用機、海軍の練習船に差し押さえをかけていた。
当時の政権は徹底抗戦する構えだったが、この問題を解決しないことには国際金融市場で資金調達ができなかったため2015年にハゲタカファンド側の要求をほとんどのむ形で決着がついている。
これを主導していたファンドは実際の数字は明確に発表されてはいないが、200億円2280億円ほど回収したといわれていて、11倍ほどのリターンを得ることに成功している。
数字だけ聞くとものすごい結果を残したようにも感じるが、実際は15年で割ると1年あたりの利益はそこまで大きくなく、これにかかった弁護士費用なども少なくないためリスクに見合っていたかは難しいところである。